傑作

蘭亭序


唐の書聖 王羲之(303〜361)の傑作『蘭亭序』
古今東西の書の名品の中で最も多くの人に好まれる書であり、最も多くの人が学んだ書です。

唐の太宗皇帝は愛着のあまり陵墓に陪葬させたため、残念なことに現在私たちが見ることができるのは王羲之本人が書いたものではなく、生前名人に模写や臨書をさせたものです。

唐の三大家と言われる虞世南や褚遂良の臨本(紙に書いたもの)のほか刻本(石に彫ったもの)も優れたものがあり、どれが最も王羲之の書いたものに近いのか、常に議論が絶えないと言われています。


これほどまでに多くの人が手がけた書は、それぞれに特徴があり魅力的です。書き手の技術はもちろん、その世界観を感じさせ好みが分かれるのも頷けます。同じものをそれぞれが表現すること。その人自身を表現するようでとても感慨深いです。


この蘭亭序は流れるような柔らかい筆づかいが特徴です。この中には書のあらゆる表現要素が入っていて、抑揚をつけながら筆先を利かせた細やかな運筆をしています。
点画は伸びやかで雅な趣が感じられます。また同一の文字はすべて異なる字形で書かれており、多彩な表現が見られます。おおらかな動きと繊細な線質、書いていて気持ちの良い古典のひとつです。

書を学ぶ時、行書に挑戦するならまずはこの蘭亭序をおすすめします。行書の筆づかいや造形の美しさに圧倒され、たちまち惹きつけられることでしょう。

この蘭亭序から学ぶことは多いです。基本に立ち返りしっかりと身につけていきたい古典です。

     


数々の印は、数百年の間所蔵者や鑑賞者が押したもの。この書が名品とされてきた証。

張金界奴本刻本(上)                 神龍半印本臨本(下)
張金界奴本刻本(上) 神龍半印本臨本(下)