幸福感

耀彩の世界


時々開く一冊の図録。そこには私の安らぎや幸福感があふれています。


20年ほど前に金沢を訪れた際に、九谷焼祭りを見に行きました。
九谷焼は時代や窯、作家により「九谷五彩」「青手」「赤絵細描」「金蘭手」など多種多様にある事をその時始めて知りました。

その中で吸い込まれるように惹きつけられたのが、『三代目徳田八十吉』さんの作品です。

独自の釉彩技法によるグラデーションがとても神秘的で深く美しい。絵ではなく色にこだわりる「耀彩」の世界は魅力的です。高温で焼く透き通る輝きと繊細なフォルムが秀逸です。


17年ほど前、幸いなことに地元の百貨店で『三代目徳田八十吉耀彩展』が開かれました。もう喜び勇んで見に行きました。

大作がずらりと並び、ひとつひとつが輝いています。じっくりと味わうように見ていきました。本当は手に取り中を覗いたり、裏書きを見たりしたい衝動を抑え多彩な色の変化を楽しみました。見事なグラデーションが私をくぎずけにします。先に行ってはまた戻り、見比べたりしながらゆっくり時が流れました。

会場を眺めていると担当の方に声をかけられました。「丁寧に見ていただきありがとうございます。」「よろしければぜひこちらを!」と図録を渡されました。驚いた私に、「熱心に見てくださったお礼です。」と。

そんな事があるのでしょうか…
恐縮しながらもありがたく頂戴し、17年経った今でも時々眺めています。

これを開くと、一瞬で静かな深い世界に入っていきます。あの会場で感じたそのものが蘇ります。心がざわついた時ここに来ると落ち着いていきます。そんな穏やかな幸せを感じるのです。

音楽を聴いたり、自然に触れるのと同じ感じです。そう感じさせる存在を大事にしていきます。

広がりや豊かさとなる感覚をどんどん味わい、心の財産を増やしていきたいです。


  作品図録より
  作品図録より